特許法 保護対象と保護要件
第2節 保護対象と保護要件
1 発明とは T.p.24-29
(1)総論
・「発明」の定義=特許法1条
・特許要件(登録要件)=「発明」のうち、特許を受けることができる(特許法で保護される、特許権が認められる)条件
(2)自然法則利用性
・自然法則=自然界における化学的・物理的・生物学的・天文学的な法則性のある原理・原則
・自然法則そのもの(=発見)や永久機関は不可
相対性理論 万有引力など
・一定の客観的条件が整えれば一定の結果がある程度の確率で生ずること=確実性
・自然法則でないもの=人為的な取り決め、人間の思想や感情
例)暗号、ゲームのルール、宣伝方法、商売のやり方(ビジネスモデル)、数学の解法(アルゴリズム) コンビニの商品陳列
・ソフトウェア(プログラム)はハード(装置)との関連付けがあれば自然法則を利用していると考えられる
(3)技術的思想性
・技術=一定の目的を達成するための合理的手段
・反復可能性=再現がある程度の確率で可能なこと
・真珠の養殖方法、植物の新品種
・実施可能性=未完成発明や特定の人間しか再現できないもの(コツ)は不可
(4)創作性
・創作=自然界に存在していなかったものを人間の精神活動の成果として新たに 生み出すこと
・発明 ⇔ 発見=以前から自然界に存在するものを見つけ出すこと
・用途発明=既に存在が知られている物の性質を新たに発見し、ある目的達成のために用いる発明 例)うまみ成分とグルタミン酸、遺伝子特許(ヒトゲノム など)
(5)高度性
・「発明」の定義としては事実上ほとんど意味なし
実用新案法 の 考案 と差別化するため
考案=自然法則を利用した技術的思想の創作 /うち高度なものが発明
2 特許要件(登録要件)
(1)産業上の利用可能性(29条柱書) T.p.29-31
鉱工業のみならず、農水産業や商業などほぼ全ての産業が対象
「人間を手術、治療または診断する方法」は除外
他方で、医薬品や医療機器は産業上利用可能性を充足し得る
(2)新規性(29条1項1~3号) T.p.31-35
新規性喪失事由(=①公知発明、②公用発明、③刊行物に記載された発明等)に該当しないこと
ⅰ)公知発明(1号):「公然」の意味
ⅱ)公用発明(2号):「実施」(2条3項)
ⅲ)刊行物記載等(3号):
新規性判断の基準:地理的範囲=世界全体、時間的基準=時・分
新規性喪失の例外(30条)
(3)進歩性(29条2項) T.p.35-38
進歩性要件の趣旨
進歩性=当業者にとっての創作の困難性
進歩性の判断手法:①引用発明の特定→②出願発明との一致点・相違点の把握→③当業者による容易相当性
判断の諸類型:
イ)寄せ集め(単なる寄せ集めか結合か)
ロ)置換・転用(新技術を用いた鉄製のエンジンと同技術を用いたセラミック製のエンジン、ポンプの技術をコンプレッサーに利用、自動車用のワックスを床用のワックスに利用など)
ハ)数値等の限定(温度、質量、時間等、形状、配列、材料など)
(4)特許登録が認められない発明(不特許事由) T.p.38-39
公序良俗・公衆衛生を害するおそれがないこと(32条)
保護の適格性(=特許を付与するか否か)と実施の規制とは別の問題
例)紙幣事件(東京高判昭和61年12月25日)
・生命倫理に反する発明 例)人間の生命や身体に関する発明(クローン人間など)